「ブランコ」
そっと目が合う。
一秒にも一瞬にも満たないその間に濃密な色が見えた。胸をくすぐる羽根のような高鳴りを鎮めて会議に集中しようとするが、乙女心はすでに溶け出している。
結局ほとんど話を聞かないまま、会議が終わり彼は悪戯っぽい笑みを浮かべて部屋を出て行った。
ああ、絶対後でからかわれる。でもその時間を待ち遠しく思う自分を無理に否定することもなくなった。
彼と出会ってから世界が美しく思えた。
薔薇色と表現するのはありきたりだけれど、色褪せていた世界が急に鮮やかになってハッと目が覚めた気がした。
彼は私よりも少し年下だ。けれど若くまっすぐな姿勢は私がまだ女性であることを思い出させるには十分だった。
これまで欲しいものはすべて手に入れてきた。退屈なことは決してないようにしてくれる。それらを手に入れられるだけの価値が私にはあるのだ。
書類をまとめて部屋を出ていこうとして、勢い余りドアノブに指が当たった。廊下に響き渡るような金属音。
左手薬指の時代遅れのシルバーリングが少し震えていた。
2/2/2026, 10:21:41 AM