komaikaya

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「求愛行動〜」

 言いながら奴が手にしているのは、本物の孔雀羽根だ。フサフサと『揺れる羽根』には、まるでトルコの魔除けのナザールボンジュウ🧿、あの藍色の目玉みたいな模様が描かれている。
 自然に抜け落ちた羽根を消毒したもの、という説明付きでネットショップで売られていた、さっき届いたばかりの20本の孔雀の羽根──それを奴が、俺に向かって広げてみせたのだ。

「孔雀が羽根広げるのはオスの求愛行動なんだって、知ってた?」
「っ、知ってるし、そんなん……こっちに向けんな、バカ」

 羽根の複数の目の圧から逃れるように、俺は顔を背ける。文化祭は3日後、小道具の羽根飾りはいまやっと材料が揃ったところ。係である奴と俺の二人だけで仕上げなきゃならないし、だから徹夜、泊まりでとにかくどうにかしよう……ってことになったんだが。
 一人暮らしの奴の部屋で二人きり、とかいうこの事態、それで浮かれてるのを奴には、気づかれたくないってのに。
 そんなん、されたら……本気にするぞ?

「あーあ。なーんだ、求愛失敗か〜」
「ふざけてる場合か、時間ねぇんだ」
「わかってるって。……うん。じゃあ、羽根飾りが仕上がったら、またチャレンジしてみよっと!」
「……は、あ?」

 奴が思わせぶりに、しかし爽やかに笑ってみせる横で俺は、動揺と期待で頭ん中がぐちゃぐちゃになっている。どうすんだ、俺……あと3日、正気でいられンのかよ?

10/25/2025, 3:53:37 PM