秋
ふたりでよく歩いた 映画館への道。
数日会わなかっただけなのに、街路樹はあっという間に紅に変わってしまった。
たったそれだけのことなのに、少し不安になる。
ひとり、いつもの場所で待っていた。
すみません、これ、落としませんでしたか? 後ろから声をかけられた。
いえ、私のじゃな……。
振り返ると彼が立っていた。チケットを2枚持って。
そうですか。でもよかったら一緒に見ませんか。ちょうど2枚ある。
視線が合うと、お互い笑顔になった。
ナンパですか。
ええまあ。 後ろ姿に惹かれて。
それはそれは。
なんてことない会話が温かい。芽吹いた不安も溶けていく。
9/26/2024, 9:44:56 PM