お題《時計の針が重なって》
カーテンに透く光
沈黙の書架は聖堂に似ている
窓際に並ぶハーブが風にゆれる
村の東のある大樹からつくられた机
大樹は古くから伝わる神樹
村人は毎朝祈り
旅人は目印に
ローブを纏った少年は
山積みにした古い本を崩しながら
毎日メモ書きに明け暮れる
夜明けから 黄昏まで
黄昏から 夜明けまで
深緑のローブは
書架の管理者のあかし
あの人が ほめてくれた ローブ
森の香りがするローブ
どうせ修復魔法でなおせるのに
針と糸で 魔法のように繕う
あの人は 魔法をかける
「得意じゃないけど、大切な人のために縫うのは好きなの」
あの人の香りが消えない
だから このローブは とくべつ
だから このローブは あの人と邂逅を果たすまで
書架の時計をみる
あの人の針の音がきこえる
僕らの針が重なるまで
僕らの手が重なる そのときまで
9/24/2025, 12:02:29 PM