アオハルとバスケ

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『アーケードの下で二人だけの貸切を』

ポツポツと雨の音だけが商店街の大通りに響く。冬の終わりの二月の雨はまだ冷たく、春の初めを感じさせないような寒さが身体の中にキーンっと沁みる。今日は学校行事の一環で、浜スタを見学した。電車で寝ていただけなのにクラスメートに笑われ、恥をかいたのをよく覚えている。駅の前のまっすぐな商店街のレンガの道で解散をした。
「皆さん、気をつけて帰ってくださいね。」
このセリフ、小学校に入ってから何回目だろう?そう、考えても無駄なことを思いつつ今日は疲れたので早めに帰ることにした。駅の前の商店街は『商店街』いっても小さくてこぢんまりとしたものだ。

ポツポツ

みんな、急な雨にビックリしてあっちゃこっちゃをグルグルと行き来している。その中でクールな装いを見せている彼は私のすきピだ。届きそうで届かないところも一つの魅力だと思う。彼と私は同じ方面に住んでいる。それだけで奇跡だと思えた。

ザー

雨が強くなってきた。ほとんどの人たちがもう自分の家へ向かって足を進める頃だ。友も来ないし私ももうそろそろ帰ろうと思った時だ。
傘がない!どうしよう、、、。謎の沈黙後、予備に取っておいたブカブカのレインコートを仕方なく羽織って道を進んで行った。
「俺、あっちから帰っていいかな?」
へっ?
間抜けな声が出てしまった。彼の友は、別にいいんじゃね、知らんけどそうしたら。などと彼の意見を尊重しているようだった。ってことは私と彼以外方面が同じ人がいないので、「ふ、た、り、き、り♡」(二人きり)ということになる。
そこまでは偶然、そして奇跡だと思った。でもその数分後、曲がり角が現れた。シーンとした空気に私の緊張感が混ざり、絶妙な空気感が創られていく。
ドクンドクン この鼓動が彼に聞こえてしまわないように必死に隠す。隠せれているか分からないがそれでも彼に気持ちを知られたくなかった。その曲がり角は方向的に彼が曲がる必要がない、、、。だからこの夢のような時間はもう終わり。五分間もない短い時間の中だったが、彼とここで別々になるのは少し寂しくて虚しかった。
スッ
私が曲がった
スッ
彼も曲がった
えっ?どうして?彼はこっちに来ないでこのまま真っ直ぐ突っ切った方がタイパがいいのに。もしかして私たち両思いだったりして。彼からいつか思いが告げられるんじゃないかと勝手に期待している私がいた。
【※小5の時の実話】
アオハルとバスケ

6/19/2025, 12:53:11 PM