今日は僕一人で護衛の任務だ。
女の人を守って町まで行って、お買い物のお供をして…
終わったら日が暮れる前にお迎えの人の所までお送りする。
誰なのかはわからないけど、大切な人って聞いてるから
もしかしたら高貴なお姫様かもしれない。
よーし、頑張るぞ!
意気込んで待ち合わせの場所に着いたら、市女笠のお姉さんが一人で立っていた。きっとあの人だ!
『こんにちは。』
今日はよろしくね、と優しく微笑ったその人はとーっても
綺麗だった。……大変だ、本当に本物のお姫様かも。
しっかり護衛しなくちゃ、と思って先を歩こうとしたけど、お姉さんの希望で手を繋いだ。とっても優しくて、帰り道で僕が日に当たりすぎてクラクラした時も、ちっとも怒らずに日陰で休ませてくれた。僕がお守りしなきゃいけないのに…と落ち込んでいたら、お姉さんは困ったように笑って、どうして僕を護衛にしたのか教えてくれた。
お姉さんには片思いしている人がいること。自分が出歩くとその人を煩わせると思って遠慮していたら、その人が僕なら
きっと仲良くなれるって薦めてくれたこと。
もう大人のお姉さんに、こんな可愛い顔をさせられる人って誰なんだろう? お姉さんは教えてくれなかったけれど、そのすぐ後に同じ顔をしていたから、僕には解ってしまった。
お迎えに来たのは、僕ととっても仲良しのあの人だ。
任務をありがとうございました、とお礼を言ってこっそり
聞いてみた。お姉さんは、本物のお姫様ですか?って。
『違うよ。…でも、私の大切な人。』
秘密だよ、と言ったその人はとっても優しい顔をして、ほんのちょっぴり照れてるようだった。
…ええっと、お姉さんはあの人をお慕いしていて、あの人はお姉さんが大切で。でも、それを二人とも知らなくって…
僕だけが知っている。それって、すっごい―――
【スリル】
11/12/2023, 4:22:29 PM