萌葱

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遠くの街に行こう。
君は僕の手をぎゅっと握って言った。

それから何時間汽車に乗って、何時間歩いていることか。
僕たちは汽車に乗る時も、歩く時もずっと手を繋いだままでいた。僕は周りの目があるのと少し気恥ずかしいのとで手を解こうと何度か握りしめる手を緩めたけれど、僕が緩めるたびに、代わりに君はぎゅっとキツく握りしめてくる。あまりにキツく握りしめてくるものだから、僕はなんだか怖くなった。

いったい僕はどこに連れて行かれるのか。

僕は立ち止まった。僕の手を引き、先を歩く君は立ち止まり、こちらを振り向いた。

そして僕が口を開くよりも先に、君は繋いでいた手をゆるりと緩めた。

君はまた、僕を置いて歩き出した。

この夢を見た日から、僕は君と、二度と話すことも会うことも出来なくなった。
後悔している。

3/1/2023, 6:10:52 AM