『ところにより雨』
『ところにより雨となるでしょう。』
『雨かぁ…、』
雨は好きかい。僕は、あまり好きじゃない。
今日の大阪はところにより雨。
もしかすると、その"ところに"は僕の地域なのかもしれん。
取り敢えず、折り畳み傘と憂鬱な気分を鞄に押し積めて学校へ向かう。今日も、どうせ、好きな子とは話せない。茶髪ボブの、可愛らしい子。ほら、結局話せない。
心も、大雨。空模様まで、号泣中。
呆れながらも、折り畳み傘を手に持ち下駄箱へ。
すると、黒い髪を三つ編みの御下げに黒淵の眼鏡を掛けたクラスの目立たない子。正直、可愛いとは思わない。
『帰らんの、?』
『うん、この大雨は帰れへん。』
俺は、彼女に折り畳み傘を押し付けた。
『え、?』
『女が風邪引くんは可哀想や。』
そう一言だけ残し、俺は鞄を頭上に大雨の中走り去った。彼女の『あッ…、』と何かを言い掛けたのすら、聞かず。そんな、彼女が今じゃ俺の嫁さんなんて、人生、分からんな。
24.3.24
3/24/2024, 4:17:14 PM