大丈夫。
そうお前が言う度に、無性にイライラした。
全然大丈夫じゃないだろ。なんだよ、その貼り付けたような笑顔。
声だって僅かに震えてるし、俺が何も気が付かないと思ってるのかよ。
傑は詮索されるのをとても嫌う。問い詰めたって頑なに何も打ち明けないだろう事は分かりきっていたし、そうする事で余計に追い詰めてしまう事も俺は分かっていた。だから傑から話してくれるまで待とう、って。
いつもならそうやって喉まで出かかった言葉を飲み込んだのに。
今日は、部屋に戻るよ、と言って離れようとする傑の手を無意識に掴んでいた。
「なぁ、お前さぁ…俺にも話せない事って何?俺はそんなに頼りない?全然大丈夫って顔してねーんだよ。俺が気付かないと思った?」
「だから大丈夫だって。そういう訳じゃないから。本当に何もないよ。」
と距離を置こうとする。でもどうしてもそのまま帰らせる事は出来なかった。なぜか嫌な胸騒ぎがして、絶対に放っておいたらいけないと感じていた。
「傑、ちょっとこっち来て。」
傑の手を引っ張り半ば無理やりにベッドに座らせる。
俺は傑の前にしゃがみ、下から覗き込むようにしてそっと手を握った。
傑は無表情で斜め下に目線を落とし、頑なに俺と目を合わせない。
本当に頑固な奴。どうせ1人で全部抱え込もうとしてるんだろ。
「傑は何も言わなくていい。ただ俺の話を聞いて。俺はお前が不安に思ってること、苦しんでること、半分背負いたいんだよ。お前が少しでも楽になって欲しいし、ちゃんと笑って欲しい。助けたいんだよ。お前に助けて欲しいって言って欲しいんだよ。」そう言って肩に手を回し優しく抱きしめた。
(続く)
12/6/2023, 2:11:59 PM