何も掴まなかったからこそ(テーマ 胸が高鳴る)
1
2020年の日本の男性の生涯未婚率(50歳時点未婚割合)は28.25%。遠からず3割に達しそうだ。
その一端というわけではないが、私も40代で未婚男性である。
言い訳をするなら、仕事。一言で仕事だ。
世の中は、人手不足といいつつも、一方で人員カットを行っている企業で溢れている。
非正規雇用もまた多い。
一方で人を切り、非正規雇用に変える。彼らの多くは定時に帰る。
一方で『働き方改革』を唱え、育児休業や短時間勤務によって子育て中の社員は定時か、それより早く帰る。
他方、仕事を増やし、残った正社員は増えた仕事と減った人員分の仕事を背負うという、地獄のブラック勤務を行うのだ。
夜中残業、通常営業。
休日出勤、いつものこと。
そして、私はその地獄のブラック勤務を15年以上行った結果、20代後半から40代前半人生を、仕事以外何もせずに浪費してしまった。
タイムマシンに乗ったのかというくらい時間が飛んだ。
2
ハッと気がついたのは自分の身体の衰えと、両親の老いだ。
体に無理が効かなくなる。
目の疲れが酷く、パソコンの画面を見ていられない。
実家の父が難しい話をしなくなった。
母はよく怒るようになった。
もう、予想される未来は、両親の介護をするようになって地獄の労働に耐えきれなくなり、介護離職する自分の姿。
「人生の行き詰まり」というやつだ。
何の仕事をしながら両親の介護ができるのか。
かといって、仕事をしなければ食っていけない。
親の期待に答えるためにいい大学に行き、親の勧める会社に入り、馬車馬のように働き、身体の衰えと親の介護のためにその会社を辞める。
子どもがいない。
結婚もしていない。
老いた両親は、息子である私がいつまでも結婚せず、孫がいないことを悲しむ毎日。
毎日暮らしていくので精一杯。
『自分』という生き物はどこにいるのか。
そういえば、自分は何が好きだったのかも。忘れていた。
3
学生の頃、私は文芸部にいた。
熱心な部員というほどではなかったが、季節に一回発行する文芸誌のために原稿をせっせと書いた。
そういえば、文字を書かなくなって20年近くになる。
・・・文字を書くだけなら、介護しながらでもできなくはない。
では、その仕事の合間に、または、仕事をしながら夢へ挑戦するのかどうか。
そうして、私は「書く習慣」というアプリをインストールしたのだ。
完成度など知ったことか。
内容など輪をかけて知ったことか。
とにかく毎日書いておけば、一年後には300以上の何かが残る。
明るく楽しく毎日を過ごす?諦めた。
かわいい奥さんと子どもの待つ家に帰る?諦めた。
毎日ワークライフバランスのとれた職場でほどほどの給料とほどほどの労働で勤務?無理だ。
周囲に、会社に期待はしない。
ただ手を動かすだけだ。
それなら、できる。
『その日は○○だから、参加できないんだ。また誘ってくれ。』と諦める必要がないこと。
スマートフォンで書くこともできる。
信号待ち、電車通勤、実家の介護での空き時間。
有効活用もできる。
4
そして、私はこの文章を書いている。
特に何か目標を持っているわけではない。
単に、働いて家族の面倒を見るだけの、自分を見失った生活の中に、書く習慣をつけるために。
久しく感じていなかった胸の高鳴りを感じる。
自分の道を歩き始めるワクワク感。
そう。ただがむしゃらに歩いてみる。
歩かないと、たどり着かないから。
たとえたどり着かないとしても、歩いてだめだったのと、歩かず嘆くだけでは、つらさが違う。
そう。
言われるがまま生きても、きっと、私を含めて誰一人、満足などしないから。
(アプリ宣伝の文章ではないですよ。一応)
3/20/2024, 10:11:36 AM