#18 快晴
同僚と1階に降りると、自動ドアを抜ける空気が快晴のそれだった。
同僚は本当にうれしそうな顔をして「すごくいい天気!」と褒め称え「こんな日はどこか旅行へ行きたいよね」とも言った。
わたしは笑みを浮かべて「本当だよね」と返した。
ピカピカに日差しを浴びた横断歩道。
往来する車も排気ガスを出しているなんて思えないほど、無害な乗り物のように輝いて通り過ぎていく。
7部袖のブラウスがちょうどいい、のびのびした日。
分かる。いい天気で旅行したくなる気持ちもとっても分かる。だけど。
わたしがどこかノスタルジックな気分になるのは、今にも雨が降り出しそうな曇天でもなく、しとしとと寂しげな雨の降る日でもなく――平日の、なぜかこんな過ごしやすい晴れ渡った日だ。
ふわりと、清々しいとしか表現できない風がわたしの後れ毛を揺らした。押し寄せる、どこか胸を締め付けるような感情。
その理由が分からないまま、わたしは快晴がちょっと落ち着かない気持ちを秘密にして、ランチに向かう。
4/14/2023, 4:57:30 AM