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たくさんの想い出

今日はクイズ大会日和だ。
天気は快晴、夏にしては暑すぎず、余計なことに気をとられなくていい。これが雨なら湿気で体調が良くないかもしれないし、気温が高いと集中力が鈍る。

「おう!お前も出るのか」
熊田が声をかけてくる。奴も大会の常連だ。その名の通り大きな図体でよくひびく声。
「今日は負けないからな」
僕も負けじと大声で答える。今回も強豪揃いだ。鹿谷や兎川、亀沼もいる。誰が優勝してもおかしくない。油断禁物だ。

「みなさん、所定の位置についてください!」
係員から指示が出る。僕たちはそれぞれ決められた位置にスタンバイする。右手にスイッチを握りしめ問題が読み上げられるのを待つ。




「わたしのことを語ってほしい」
それが森の願いだった。
すべてがなくなった後も語り継いでくれれば存在することができるから。かつてのわたしを知る者たちがいたらそれでいい。

その願いをかなえるために僕たちは語り続ける。ある者が問題を出しほかの者が答える。忘れないために。
かつて僕たちが一緒に暮らした広大な森のことを。

11/18/2023, 12:11:15 PM