まだ夢に見る、遠い昔の英雄譚
黄金色の風に撫でられて
輝ける未来の為に戦ったあの頃
目指した世界がここにある
悔いも怒りも持たずに終わり
今度は当然のように愛されて
何者でもない、ただの私を持て余す
彼もまた、何者でもない一人として
花嵐に紛れ、どこかで生きていると良い
愛に膿んだ運命を投げ捨て
張り詰めた弦のような矜持など忘れて
凡百の花弁に埋もれていれば良い
どうか最後まで木漏れ日の端で隠れていて
それでも美しく香るのだろうが
きっと出会うべきではない
蕾を持たない、ただ落ちる日を待つ無色の棒切れ
この体は既に宿花を手放した
病める葼と笑われる、しがない花売り
かつて謳われた星、射抜かれ朽ちた成れの果て
西陽の合図に立ち上がれば、疾る光明と風が鳴る
久方振りの来訪を告げる鐘の音
慣れた台詞を弾く邂逅に、吐息が震えて
閉ざされた園は、今、地平の彼方まで透き通る
望まれた世界がここにある
遥か時を超えて初めて、絡めた小指の温もりよ
(春風とともに)
3/30/2025, 11:15:05 AM