ん、さむっ……窓開けっ放しにしてたんだっけか。
夏から秋へ。緩やかに移ろうようなものではなく、それは突然訪れる。昨日までが夏で今日からが秋。
まだ吐く息は白く濁りやしないけど、少しだけ外の世界を歩きたくなった。
半袖に薄めのパーカーを羽織って家の中から1歩だけ踏み出してみる。早朝だということもあって冷え込んだ空気が全身を震わせた。
歩き出してみると案外昨日とは何ら変わり映えのない世界が流れ続けていた。木々はまだ緑を残したままで雑草は静かに夏を主張している。
少し離れた農道はもう、黄金色に染まった稲が頭を垂れていた。トンボがじゃれ合うように周りを飛び交って少し踏み外した右足は朝露に濡れてしまった。
この寒空の下で過ぎていく景色は温かみのある色彩へ移ろうのだろうか。紅葉した葉々が落ち、果実が実り、命の終わりを迎える冬へと備えていくのだろうか。壮大な自然の摂理の何万分の一にも満たないちっぽけな自分の存在がたった数分だけ、感傷的になったところで日が少しずつ昇っていくだけだった。
何日ぶりかの朝日を浴びて、秋が来るのが少しだけ楽しみになった。
題材「秋色」
9/20/2025, 8:32:21 AM