あの子はいつでもゴキゲンと不機嫌の狭間にいる。
心の真ん中にごく細い、あるいは狭い境界線があって、右へ揺らげばゴキゲン。左へ揺らげば不機嫌。風が吹いても嬉しくて、そうかと思えば反動で次の瞬間には口をへの字に曲げる。
恐るべき気分屋。
Instagramで再三流れてくる流行りのドーナツを食べるあの子に同行する。
あんなものはね、広告屋が作り上げた幻惑だ!なんて眉根寄せて息巻いてたのに。
ぽってりとしたクリームのてっぺんに真っ赤なドレンチェリー。ひとくち食べたらもう、目玉が宝石みたいに輝いてる。
玩具齧ってるみたいだな。
ひとくち食べるかと問われて、甘いものはちょっと……と断ると、予想はしていたが石ころみたいな顔してる。
しかしこちらも慣れっこだ。
ドーナツ店から連れ出して、公園へ。
鳩に囲まれゴキゲンになり、鳩にしつこく餌を催促され不機嫌になり、鳩を脅かし大いに笑い、鳩がいなくなった公園の真ん中でぽつんとさみしがってる。
わたしはあの子をだきしめよか、つきはなそか、決めかねたまま、真ん中の境界線に立ち尽くしてあの子をみてる。
『心の境界線』
11/9/2025, 9:55:49 PM