向かい合わせ
私は、君と向かい合わせになるこの時間が大好きだ。
三限目の数学の時間。
先週あたりからグループで行う課題が出ていて、今回も席の近い四人組で机を合わせる。
君は隣の席だから、いつもはその綺麗な横顔を眺める事しか出来ない。
でも、この時間だけは向かい合わせになれる。
これは隣の席の特権なのではないだろうか、なんて。
この時間は密かな私の楽しみですらあった。
君の視界の中に、一秒でも長く私が映ると良いな。
そんな事を考えながら、私はプリントの問題を解いていく。
私は今日も下を向いたまま、前髪の隙間から目だけで君を見つめた。
皆んながプリントに目線をやる中、私だけが君に目線を送っている。
__そう思っていたのに、君は私の先を見つめていた。
君のそんな目、初めて見た。
私は君をそんな目にさせるモノを知りたくて。
私も君と同じモノが見たくて、自然な仕草で背後を向く。
君と私の視線の先には、かわいいあの子。
ああ、そうか。
身体だけは向かい合わせになっているのに。
目線が、心が私の一方通行。
…ねえ、もし私が君への想いを告げたのなら。
その瞬間だけでも、目線も心も私と向かい合ってくれるのかな。
8/25/2024, 12:06:12 PM