一緒に花火を見た思い出、その日に買ったたこ焼きを地面に落としてしまって、貴方に笑われたんだっけ。
その後、一緒にくじを引いて、2人揃って残念賞を引いて、もらった駄菓子をゆっくり噛み締めながら、夜の九時までくだらない話を繰り広げたんだっけ。
懐かしいよね。大人になっても、そうやってふざけて毎日を過ごすもんだと思ってた。
気がつけば大人になってた私。小さい頃からなんとなく抱えてた夢を叶え、色んな人に慕われて、幸せなはずなのに、何かが足りない気がする。
それで、気づいたんだ。最近、忙しすぎて貴方に会いに行ってないって。
貴方の好きな、月下美人の花を抱えて、私は山の中にあるあなたのお墓に向かった。
「久しぶり。あのね、髪、切ったんだ。長い髪、私には似合わないって、あなたがよく言うからさ」
そう言って、私はお墓の前に座った。なんだか慣れない短い髪を触って、貴方のお墓にゆっくり月下美人を飾った。
「急に、ごめんね。なんか、寂しくなっちゃって。ほら、私自分から話しかけるのとか、苦手だし。貴方みたいに、私に根気よく話しかけてくれる人なんて、なかなかいないんだよ」
小さい頃から、孤立していた私。でも、私が見ている世界はどこかキラキラしていて、それを伝えるには子供だから全然上手くなかったけど、貴方だけは私の話を聞いてくれた。
そんな貴方は、原因不明の病気で、私の目の前でこの世を去ってしまった。その時、貴方はなんて言っていたっけ?
「……ごめん。もう行くね。あ、明日ね、今年最後の……コンサートがあるんだ。よかったらさ……来てくれると、嬉しいな」
それじゃ、と私は立ち上がりながら、次の言葉を言いかけると、頭の中で懐かしい声が反響した。
『さよならなんて言わないで』
あぁ、思い出した。あなたは、あの時……
「……絶対、会おうね。約束だからね!」
そう叫んだ瞬間、冷たい風が優しく私を包み込んだ。親指にできたタコや唇の裏についた歯の跡が、今更ジンジンと痛んだ。
誰も認めてくれなかったこの痛みは、今では誰もが尊敬する痛みになっている。
私は、あの時みたいに下手くそに笑って、貴方に大きく手を振った。
12/3/2023, 12:46:44 PM