もしも世界が終わるなら。
何もせずに、ただ、終わりゆくこの星を見つめていたい。
数えきれないほどの生命を育んできたこの星。
その生命を大切に守り続けてきたが、いつしか綻びが生じてしまっていた。
身勝手すぎる生命。不条理すぎる生命。
世界は、誰の手に治められるものでもない。
ただ、人はそれが出来ると錯覚して、あらゆる兵器を作り出した。
綻びが生じる。世界が終わる。
だから、その時は何もせずに、大切な人達と一緒に終わりゆくこの星を見つめていたい。
自業自得だとは思わない。
人はこうして生きることを選んだのだから。
ただ、その時が来たら、何か他に道は無かったのかと悔やむだろう。
この、大切な人達とともに、もう少しこの場所で生きることは出来なかったのかと。
綻びの生じない生き方。
この星に受け入れられる生き方。
私達には、それを選択する権利があった。
もしも世界が終わるなら。
何もせずに、大切な人達と一緒に終わりゆくこの星を見つめながら、涙を流すだろう。
流した涙は潮流となり、この世界で同じ想いの涙を流す人達にきっと届く。
動画はSNSで拡散され、たくさんの人々の祈りがそこに集結する。
だけど、この星の運命は変わらない。
世界の終わりの饗宴。
この星のために涙を流した人達の、最後のバズリとなる。
「お腹空いたね」
「夕飯、どうしようか」
「お腹空いたままで最後を迎えたくはないね」
「じゃあ、ガストにでも行ってお腹いっぱい食べようか」
「ガスト、やってるかな?」
「そっか。皆、自分の大切な人達と過ごしてるよな、今頃」
「やっぱり、家にあるもので最後の晩餐にしようよ」
「そうだね。お腹がいっぱいになれば同じだよね」
最後まで幸せだったと。
そう言い合える人とこの場所にいられたことを、何よりも嬉しく思う。
9/18/2025, 10:17:10 PM