ロッテテ

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「星空の下で」

見上げれば満天の星空。空一面に星々が散らばる。
静かに瞬いて輝く星に、白い溜息をついて見入る僕ら。

身体の芯まで突き刺すくらいの凍てつく空気に、身動ぎすれば身体を貫通してしまいそうで、岩のようにじっと動かず、ただ芝生に体操座りして2人、肩を寄せて空を眺める。

ここまで来る時に通った道は、何十年も人の手が加わらなかった様な山の獣道。故に僕らの長袖からとび出た肌部分には、葉の切り傷がいくつも着いていた。
君は自分の傷と僕の傷を寄せて、仲間の証だねなんて笑った。僕は途端に心強くなって、笑った。

僕らが座った芝生は、それまでの細い獣道とは違って開けてて、針葉樹のフレームみたいによく夜空が見えて、生えてる雑草も短くて、柔らかかった。

僕らは2人、人生をかけた大逃避行の最中だ。狭い檻から抜け出して、日常を捨て去って、僕ら2人だけの世界を見つける。

ああ、もし今家にいたら暖かいシチューを食べてた頃かな。薄着でも平気なくらい暖炉を炊いた部屋でスマホで時間を潰しただろう。

もう僕らに残ってるものは何も無い。あるのは名前もない様なこの子ぶりの山と、お揃いの傷をつけた僕らだけだ。

寒さに震える君の横顔を見て、口をついて出たゆめ物語。僕は君の手を取って星空へ伸ばした。

「次は、あの星に行こうか。」
そう言うと君はほっとしたように笑って、僕の方に傾いた。
そうだね、今日のところはもう眠ろう。
逃げ場なんていくらでもあるんだ。僕は君と一緒なら何処へだって行けるさ。

4/5/2024, 11:32:42 AM