まだ6月だというのに、ぬるい夕暮れの空気は肌にまとわりついて不快だ。
さびれた住宅街のアパートで、僕はベランダの窓を開けた。
西陽がまともに部屋を満たして、君は目を細めた。
「眩しい」
「暑い方がいやだろ」
君の携帯が着信音を鳴らす。
運動会でおなじみの天国と地獄。
君は発信元をちらりと見て、出もせずに切った。
「誰?」
「秘密」
「なんだそれ」
君はふいっと顔を逸らす。
汗が僕の額を伝って目に入った。
天国と地獄のメロディを鼻歌で歌いながら、君は窓を閉めた。
暑いって言ったのに。
5/27/2024, 2:21:43 PM