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いつまでも捨てられないもの

そんな物いつまでも持っている?
手に握っていたペンを取り上げられ床に投げつけられた上に、足で踏みつぶされた。
この手では、そのペンは握れない。わかっている。もう紙もない、紙の代わりもない。生活に必要な物も品質は最低限だ。それでも、ペンだった物を見つめてしまう。
ペン先と軸が金属だ。再生に回そう。そう思って、アームを伸ばそうとすると先に拾われた。
もらってやるよ。落として壊れて捨てたんだよな。
ニヤニヤしながら回収箱へ入れて背を向けて他の物を探しに行った。
そうやって、君が失ったものへの気持ちをごまかせばいい。自分は代償を求めない。
君は靴を履けない、スプリンターだったって?靴は今存在しない。今、君が足につけているのは自分と同じベアリングの入ったローラーだ。自分はそれにプラスで手も腕もスプリング丸出しのアームだ。身体もほとんど置き換わってしまって脳がそのままだ。君はまだ生身が多いから失った足や出来なくなったスプリント競技への想いが強いんだね。
表情筋が豊かだからうらやましい。自分にはないから。

さてと、どうしてこんな身体に皆がなったかを記録しよう。身体の前のパネルを開ける。楽しかった生身の時の記録は終わった。アームの先を削ったらペン先みたいになったから、まだ書ける。自分は書く事は捨てられないよ。誰が見てくれなくてもね。

8/18/2024, 4:39:40 AM