薄のごと 流る秋波は 多かれど
この文のみは 透垣の蔦
蔦育ち 透垣ふみて 越え行けば
蔦の頭は 秋風に向く
よのなかに 流る秋風 躱しつつ
変わらぬものは 透垣の蔦
秋風は 野分のごとく 吹き荒ぶ
枯れた蔦取り いとさぶしもの
野分にも 勝ちし蔦には 寄る辺あり
君の添木に 勝るものなし
根の強し 蔦とや見るや 君が蔦
我が木の下へ 居懸からんや
寄り合って 見る望月の 影優し
冷たき秋風も 温き東風
望月の 下寄り合った 蔦と木を
誰か裂かるや 野分も秋風も
秋恋の 言葉思ひて 夜を明かす
一人の蔦は 心許なし
秋風の 便りのみ聞き 夜を明かす
蔦のみぞ待つ 秋の長夜
今日の月 送れよ風よ 君がもと
我が心根の あまた全てを
君が来ず 文運びくる 風の音は
冷たく柔く 秋風のごと
秋風に 吹かれぬものなど あらざれば
頼るべきなし 蔦も文も
11/14/2024, 1:47:06 PM