流れ星を見つけたら、三回願い事を唱えるとその願いが叶う。
昔からそう言い伝えられているけど、果たして叶えた人はいるのだろうか。多分瞬きするのと同じくらいの速さで星は流れていってしまうから、言い切れる人はいないと思ってた。
「痩せる痩せる痩せる!!」
隣からそんな声が聞こえてくるまでは。
ベランダで夜風に当たっていると、缶チューハイ片手に君が来た。隣に立って「星が綺麗だね」とのんびりした口調で言っていたのに。流れ星を見つけたのだろう。ほろ酔い気分のとろんとした目がいきなり力強く見開いたから驚いた。そして大声で唱えたのだ。
息を切らす君を見ながら、感心してしまった。
短くても意味をなす単語なら三回繰り返しても言い切れる可能性が高い。
何年かに一度のなんとか流星群の日である今夜は星がいっぱい流れている。夜の時間帯でも星が見えるくらい晴れてよかった。自分も何か言おうと考えて、閃いた。
息を思い切り吸い込んで、次の瞬間、輝いた星に向かって叫んだ。
「勝つ勝つ勝つ!!」
卒業して数年経っているものの、未だに大学時代のサークルメンバーと交流が続いている。仕事帰りに飲みに行くこともあれば、休日に集まってバーベキューやキャンプを楽しむこともある。今は卓球にハマっているのだが、自分は負けが続いてしまっていた。来週も卓球をしに集まるため、勝てるように神頼みならぬ星頼みをしてみたのだ。効果があるかどうか、来週の土曜日が楽しみだ。
だから翌日に夕飯で大盛りのカツ丼が出された時は笑ってしまった。あれは決して、夕飯のリクエストをしたわけじゃないんだよ。
『流れ星に願いを』
4/25/2024, 12:55:30 PM