プール一杯のプリンを泳ぎながら食べたい、とか。
ずっと寝ていたい、ずっと遊んでいたい、とか。
億万長者に世界征服、君はムツゴロウ?
それともヒーロー?
「……なんの話?」
毎度のことながら趣旨の分からない話を突発的に喋ってくる君に、読んでいた雑誌から思わず目を離して聞き返した。
「子供の頃の夢だよ、有ったでしょ? 大きくなったら〜ってヤツ」
そう言って、へらりと君が笑う。
「……そんな昔のことなんて、覚えてませんよ」
好奇心の塊みたいなキラキラの君の瞳の圧に屈しないように、プイと顔を逸して手にした雑誌で完全に顔を覆った。
「嘘だあ」と床に寝転んでいた君が「よいしょっ」とダイナミックな匍匐前進でソファに這い上がると、膝の上に頭を乗っけてゴロりと転がる。
教えてよ、と上目遣いの君。
「だから、忘れましたって」
嘘、本当は覚えているけど、君には教えたくない。
だって絶対、君は笑うだろうから。
私も恥ずかしいし。
テーマ「過ぎ去った日々」
3/9/2024, 5:22:37 PM