昨日見た後ろ姿は、まるで汚れきった野良猫。誰にも慈しまれなかった哀れな身体だった。
彼女は傷だらけになりながら、治療もままならずまた出掛けていく。
力尽くで止めることもできた。
部屋の外で泣き出したのが分かって、無力感に苛まれる。
自分では受け止める器にもならないのか。
また深夜に帰ってきて、彼女はやたら疲弊した様子だった。
「おきて、たの」
当然です。そんなに僕は頼れませんか。と言えば気を遣わせてしまうのが分かっていた。
軽く水を飲ませてから、頃合いを見て話しかける。
「髪濡れていますよ」
雨なんて今日は降っていない。
ハンドタオルを出して、座ってと指示をすると、彼女は素直に腰を下ろした。
本当に自分には警戒しないんですね。
座った位置では、貴方を腕で簡単に拘束できる。男に背中を見せるなんて言語道断。
ミントの香りの髪を拭いていく。色が抜けていった髪はほとんど銀髪に近い。
軽く想像してみる。腕を伸ばして彼女を引き寄せて組み敷いたら…。小柄な彼女は簡単に床に転がせる。力付くではなく、ゆっくりと優しく溶かしていけば。余す所なく白い肌に刻むよう触れたら。
突然彼女が立ち上がった。
「もういいよ、ありがとう」
こちらの意図に気付いたんだろうか。本当に繊細な…感の良さ。何か口早に言い訳めいた事を並べ立てて「もう寝るね!」とリビングを出ていく。
でも彼女の呼吸がさっきからどんどん早くなっていた。指先も震えて、胸元を押さえている。
これは、まずいんじゃないだろうか。
2人だけの秘密
5/3/2026, 5:00:01 PM