「ねぇねぇ、もしも世界が終わるなら何したい?」
暑い日の夕方、私たちはいつものバス停に腰をかけながら話す。
「別に、いつも通りのことをして過ごすよ。」
私がそういうと君はあからさまに不機嫌な顔になる。
「つまんないの!めっちゃ普通じゃん!もっとさ、家族に感謝を伝える〜とか、好きな人に告白する〜とか!そんなの無いの?」
むっとしながら私に詰寄る君のことを不覚にも可愛いと思ってしまう。
「無いよ。終わりの日にそんな事しても無駄じゃないか。普通が1番だよ。」
私がそういうと、君は納得していないような、気難しい顔をする。
「まぁ、確かに、普通が1番だよね、」
そういった君の顔は俯いていて見えなかった。
君はそういう話が本当に好きだね。いろんな話をする君を見るのは飽きないよ。楽しくてしょうがない。
それを君に伝える間もなく、バスが来た。
「じゃあね。」
いつもの別れのはずなのに、少しだけ違和感があった。
しかし、それを気にかけることもなく、今日が終わった。
ーーーーーー
次の日になって、 教室に入ると君の姿が見えなかった。
毎日私よりも早く来て、おはよう!、と言ってくれるのに。
体調不良にでもなったのか、と思いながら席に着く。
机でうつ伏せになっていると、教室の隅で話している子たちの話が耳に入る。
「あ、やっぱりあの子来てないよ。可哀想だよね。」
「昨日の時点で重篤だったんでしょう?病院にいた方が良かったんじゃないのかな。」
「なんかね、最後まで普通に学校に来たかったらしいよ。」
「ちょっと、それ、どういうことなんだい?」
私は飛び起きて、その子たちに話を聞く。
「え、あれ、聞いてないの?あの子、不治の病だったんでしょう?」
は、と昨日の記憶が蘇る。
じゃあね、といった君の顔が少し苦しそうだったのも。
世界が終わるなら、なんて、話をしたのも。
君といる世界が終わるなら、
それなら、それなら、私は、もっと、
なんて、考えても、もう遅いけれど、
9/18/2025, 2:54:25 PM