俺がマスクを外すと、いつだって思い詰めたような顔をする。けれども決して目を逸らさない。
たいていの人間は、肉色の生々しい傷跡と、引き攣れた頬の皮膚を見れば、顔に嫌悪をにじませて視線を逸らす。もしくは好奇の目で、じろじろと観察してくるのが常だ。
この傷を前にして、まるで自分の痛みのようにひどく苦しげに眉を寄せるのは、この男だけである。いっちょまえに罪を引き受けたような顔をするから、つい笑ってしまいそうになる。
馬鹿なやつだと、つくづく思う。もう十数年も前の出来事に、いつまでも囚われている。まあ、逃げられないように足枷を嵌めているのは、ほかでもない俺なんだけど。
あれは事故だった。咄嗟に庇ったのは俺の判断なのだから、べつにお前が気に病む必要はない。そう言ってやればいいんだろうが、あいにく俺はそこまでお人好しじゃない。
むしろ、ちょうどいいと思った。お前がだれかのものになるくらいなら、俺はお前の傷になる。骨の髄まで抉るような、とびきり深い傷痕に。
なんでもよかった、お前の心を繋ぎ止めることができるなら。いびつな形の絆でもかまわない。一生消えない傷を抱えるように、一生俺の隣にいてね。
【テーマ:絆】
3/6/2026, 12:04:51 PM