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些細なことでも




 トントントン、と包丁の叩く音に目が覚めた。

目覚めの腹を刺激する香りに、幸せな気持ちで起き上がる。
寝室から出てキッチンに向かうと、愛しい人の姿があった。
流れるような手さばきは、毎度のことながら綺麗だと思う。

ーまあ、僕にとってはいつでも可愛いいんだけど。


そんなことを思いながら足音を忍ばせて近づき、そっと腕をまわした。

「おはよう、悠仁。」

「おはよ、悟さん」

「うん。おはよ、ゆーじ。今日の朝ごはんなーに?」

自分でも驚くくらいに甘い声が出た。

「今日は和食!玉ねぎの味噌汁と、卵焼きと、しゃけとご飯!あ、あと昨日の小松菜のやつまだ残ってるからそれかな!
悟さん、今日久しぶりにお休みだろ?ゆっくり食べれるからパンじゃなくてご飯にしたの」
 
なんてことないように言われた言葉が、とても嬉しかった。
繁忙期で任務が多く、今日はひと月ぶりの丸一日オフの日。
きっと、任務続きでパンばかりだったから、と自分を気遣ってくれたのだろう。
健康的なメニューのラインナップに自分を思ってくれているのが分かって、まわした腕に力を込めた。
「うは、悟さん、危ねえって」
笑いながら、でも嫌がられていない声に、たまらなくなった。

9/4/2024, 2:56:11 AM