紅茶の香り
「今日も疲れた…」
夜勤明けで疲れ切った身体にムチを打ち、退勤を押した
「お疲れ様です
お先に失礼します」
「お疲れ様ー」
近場にいた同僚に声を掛け、フロアを後にする
さっさと着替えると職場から外に出る
「眩しっ!」
お昼近くな事もあって陽の光がいつもより眩しく感じる
職場の最寄り駅に着く頃には眠気もどっかに行ってしまった
(ちょっと遊んで帰るか…)
ウィンドーショッピングを楽しんでいると夕方になっていた
帰る前に行きつけの紅茶専門店に行く
お店のドアを開けた瞬間に紅茶の香りが鼻腔を擽る
思わずほっとため息をついてしまった
「いらっしゃいませ」
白いシャツに黒のベスト、黒のパンツに黒ネクタイをしたウェイターが出迎えてくれる
ウェイターに案内されるまま席に着くと予め決めていたメニューを伝える
「かしこまりました」
一礼して去って行くウェイター
(相変わらずかっこいいなー)
男女関係なく綺麗な動作で仕事する姿は見惚れてしまう
いつまでも見つめる訳にもいかず、視線を逸らすと心地いいクラシックのBGMが眠気を誘う
うとうととしていると商品を持ったウェイターに「失礼します」と声をかけられる
はっと目が覚め、ウェイターの顔を見るとそこには顔見知りの男性がいた
私と目が合うとニコッと微笑んでくれた
誰であれ寝顔(完全には寝ていないが)を見られ、恥ずかしくなる
「今日は1段とお疲れのようですね」
「夜勤明けで眠くて…」
恥ずかしくなりつつ答えるとウェイターは「では、いつもより甘めにいたしますか?」と優しく聞いてくれた
それに「お願いします」と答えると流れる動作で砂糖を入れ、混ぜてくれた
「ごゆっくりどうぞ」
それだけ言うと彼は持ち場に戻って行った
(相変わらずイケメンだ…)
そんな事を思いつつ用意してくれたティーカップに口を付ける
ほのかに甘くて落ち着く味だ
ゆっくり紅茶を楽しむと身体も心も温まり、また眠気に襲われる
こっくりこっくりと舟をこいでいると優しい手つきで壁に寄りかかるよう誘導され、壁に寄りかかると「おやすみなさい」と言われた様な気がした所で意識が途切れた
大好きな紅茶の香りと耳心地のいいBGMに包まれて見る夢はきっと幸せな夢だろう
10/28/2024, 3:04:45 AM