とうの

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煌々たる星月夜

雪の布団が敷かれた森をずっと奥へ進んでいくと、少しひらけた場所に出る。そこには小さなログハウスがあって、ひとりの雪娘が暮らしていた。
今日は、空が澄んでいて星がよく見えるな、と雪娘は窓の外を見つめる。狐の子から聞いていたとおり、ほうき星も見えた。雪娘は、極まれに眠れないほど心細くなる日があって、ちょうど今日がそれであった。
そうして空を眺めていると、入口の扉の氷柱が鳴らされた。誰か訪れたようだ。雪娘は白いコートを羽織って扉へ向かう。
訪れたのは、行灯売りの少年だった。
「よ、元気か」と、少年は優しく笑った。夜のような黒髪に粉雪が降りかかっていて、星空のようだった。
「元気、だけど、ちょっと眠れなくてね。そのうえ、あなたが来たから、ほんとに目が覚めちゃった」
と雪娘はいたずらっぽく笑った。
「ごめん、でも今夜、どうしてもこれを渡したくてさ」
手製の行灯。繊細に切り抜かれた和紙の中に暖かな火が灯っている。
「ふふ、いいのよ、夜更かしは嫌いじゃないし。今夜に合わせてくれたんでしょ、ありがとう。どうぞ入って。せっかくだから一緒に夜更かししましょ」
「いいの?」
「勿論、今夜は星月夜だもの」
ふたりは温かい緑茶を片手に、窓辺で談笑した。
雪娘はいつの間にか夜空ではなく、少年を見つめていた。眠るのが勿体ないくらい、美しい横顔だった。



12月5日『眠れないほど』

12/5/2022, 1:00:24 PM