いぐあな

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300字小説

悲劇と幸福の未来へ

 婚姻の宴の夜、その手紙は届いた。10年後の私から今の私に届いた手紙。この政略結婚は悲劇に終わると。
 隣国の政権闘争に巻き込まれても、蛮族に後ろから刺されぬよう結ぶ同盟の為の結婚。その10年後、父王は隣国の王と手を結び、娘の嫁いだ国に攻め入ってくると。

「……おお、なんと麗しい花嫁だ」
 流れる楽の音のなか、上座に座った夫となる蛮族の王が私の花嫁姿を見て破顔する。10年後、この彼の鋭い目が悲しみに潤み、逞しい腕が『共に逝かせて下さい』と懇願する私の胸を貫く。
『それでも、愛し愛される10年間はとても幸せな年月でした』
 手紙の締めに笑みを浮かべ、王の手を取る。
「ふつつか者ですが、末永くよろしくお願い致します」

お題「10年後の私から届いた手紙」

2/15/2024, 11:49:52 AM