世界の片隅にて

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『何もいらない』

彼女は笑った。「貴方さえいれば、私は何もいらないよ」はっきりとした口ぶりで、茶髪を揺らしながら、黒い眼でこちらを見据えて。
とても在り来りな愛の謳い文句だ。世界のどこであろうと、いずれはどこかでこんな言葉を聞くだろう。小説とかでよく見る、『月が綺麗ですね』だとかと同じ部類である。

ただまぁ、彼女はいつも自分の予想を超えてくるような女性だった。出会いは交通事故から助けられたことで、告白のセリフの一言一句さえも見透かされている。正直に言って、こんな在り来りなセリフを言うなんて。という驚きの方が強い。もうちょっとひねりを加えたセリフを言うのかなとか、いやこれは厨二病すぎて言わないとか考えてたのに。
それを含めて、自分の想像を超えてきたと言うべきであるのかもしれないけども。

4/21/2026, 7:14:22 AM