NoName

Open App

キンモクセイ(オリジナル)(短編)


(あっ!この匂い………)

匂いは記憶と強く結びついているという。
それを証明するように、ある香りが鼻腔に触れたとたん、蘇った記憶があった。

15年ほど前の大学時代。
最初で最後の恋をした。
初恋がそのまま実り、幸せな5年間だった。
就職を機に徐々に疎遠になり、別れてしまった、大好きだった彼。

いつも会うと、良い香りがしていた。
私はその香りが大好きで、何の香水をしているんだろう、オシャレだなぁと思いながら、結局、その正体を知ることはなかった。
聞いたことはあるのだが、香水なんてつけていないとシラを切られたのだ。
そんなはずないのにと、不満に思った事を覚えている。

その香りが、今、目の前に。

(そっか!そっかぁ〜)

10年越しに判明した事実に、衝撃とともに、泣きたいような、笑いたいような感情がこみ上げてくる。

その正体は。

ファブリーズ 〜森の香り〜

であった。

親御さんが好きで使ってたのかな。
デートに気を使ってシュッシュしてたのかな。
香水何つけてるの、とか聞いて悪かったな。

今となっては本人に伝える術はないけれど。
過去のあなたに。

(ごめんね。ありがとう)

11/4/2025, 12:05:06 PM