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私の人生でかけがえのない女性。……たち。
……ふたり、いました。
人生で初めて本気で愛した人は6歳年下の美樹でした。
高校2年の時に家庭教師として教えていた小学6年生の女の子。初めは教え子としか意識していなかったけれど、彼女が高校2年の時に恋愛の対象として意識するようになりました。私の両親も彼女の両親も、私たちが近いうちに結婚するものだと思っていました。
でも、あるトラブルのために、彼女は短大を卒業してすぐに失踪……。再会したのはそれから20年後のことでした。その再会した日に、彼女は交通事故で40年の人生に終止符を打ってしまいました。
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美樹が失踪して二年が過ぎた頃に、大学時代のサークルで知り合った人と成り行きのような感じで結婚。のちに明らかになったことなのですが、その結婚は政略というか仕組まれていた結婚だったのです。
その結婚と美樹の失踪に関係があったことを知ることになるには、彼女が亡くなってから五年という年月を要しました。
しかし、そのような黒い事情を知らされるよりも前に夫婦関係は壊れていました。三年間の別居を経て正式に離婚。別居が始まった当時、小学6年生だった娘は私との生活を望んだので、私と二人で暮らすことになりました。
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人生で「これが最後の恋愛」と意識した人は、職場で知り合った16歳年下の真由子でした。
父子家庭で何とかやりくりしていた上に、私の両親が共に認知症とアルツハイマーで、二人して新潟市南区にある白根緑ヶ丘病院に長期入所していたため、その両親の面倒も私が一人でやっていました。統合失調症になったりもしましたけれど、娘の笑顔に救われて克服することができました。
それでもやはり、私には時間が1日24時間では足りないほど追い込まれてあっぷあっぷしていました。そんなときに、私にお昼のお弁当を作ってくれたりして何かと支えてくれたのが真由子でした。16歳も離れているので、親戚の叔父さんを手助けしてくれている優しい姪っ子という感覚で、彼女の好意に甘えていました。
そんなときに美樹と20年振りの再会、そして交通事故による死。20年振りの20年分の愛情と、突然の死による懺悔にも似た悲しい後悔と罪悪感……もう立ち直れない……なんで自分は生きてるんだろう。どろどろとした黒いものに飲み込まれそう……
そしてとうとう、私の心臓が悲鳴をあげてしまいました。職場で突然、意識を失い倒れてしまいました。
新潟市民病院の一般内科での精密検査及び循環器内科でのサンリズム検査を受けて診断されたのは、ブルガダ症候群。心室細動による心臓突然死を引き起こす原因不明の病気でした。
娘のことだけが心配だったので、娘を母親の住む東京にある女子高へ進学させたことを、そのとき本心から良かったと思いました。
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安心すると同時に、どうして自分は今も生きてるんだろう。どうして死なせてくれないんだろう。と、そんな暗闇の中にいました。
「おとさん、無理しなくていいから生きて。おとさんの隣で一緒に歩かせてほしい。これからは、おとさんの人生にあたしも参加したいの。だからお願い、生きることを諦めないで。歩き続けてほしい、あたしに手伝わせてほしい!」
真由子は泣きながら、私にそう言ってくれました。そのときに彼女の流した大粒の涙が綺麗すぎて、何となく胸の奥のほうでぽっと小さな光が灯ったような感じになりました。
なので私は医師の勧めるICD(植え込み型除細動器)植え込み手術を受けることにしました。2013年2月14日、ICD植え込み手術実施。
そして退院したあとも、彼女は献身的に私の生活を手伝ってくれました。娘が東京へ行ってしまったので、私が一人で暮らしていることを心配して、彼女はときどき私の家へ泊まりに来てくれました。
私はいつの間にか、そんな温かい真由子のことを愛おしく感じていました。私に生きる希望を与えてくれました。今、私がこうして生きていて、立てているのも彼女が隣にいてくれたから。
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ずっと一緒にいたいと願いました。でも、16歳も歳が離れていることに戸惑いもありました。仮に健康な体だったとしても、きっと私が先に死んでしまうだろう。そしたら彼女を悲しませてしまう。寂しい想いをさせてしまうだろう。同じく悲しませるのだったら、やり直しがきく今の若いうちに……彼女を愛しているから、彼女には笑っていてくれないといやだ。泣いてほしくない。ずっと幸せでいてほしいから。
真由子と二人で沖縄へ行きました。そして、それを最後に私から身を引きました。もう誰かを愛したりしないと決めました。
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それから歳月は流れて、2018年3月。4年振りに真由子から電話があって、驚きと戸惑いがありました。どうしても会って伝えたいことがあると。そして彼女の実家へ伺いました。……彼女は子宮頸がん末期のステージIV-Bで余命宣告を受けていることを話してくれました。
なんでそんなことになるんだよ!神様は間違ってる!
こんなことになるために真由子と別れたわけじゃないのに……逆なんだよ!死ぬなら私のほうが先だろ?……愛してるのに、こんなのウソだろ?
あのとき、彼女が私のために見せてくれた大粒の綺麗な涙を思い出しました。もう、彼女のそばから離れないと覚悟を決めました。余命宣告なんて関係ないと思いました。美樹のときのような悲しい別れは絶対にしない、させない。このとき、真由子を最期まで看取ると自分自身に誓いました。
2018年6月、真由子35歳という若さで永眠。
真由子、あと1か月長く生きていられたら36歳の誕生日プレゼントにって思って指輪を用意していたんだよ。君の左手の薬指に嵌めてあげたかったです。
1/29/2024, 9:08:47 PM