「我が校からもあの有名大学へ行く者が現れるとは。非常に誇らしいぞ」
「いえいえとんでもございません!皆様の指導のおかげで……」
自分の後ろでニヤニヤと笑いながら話す親の声が聞こえる。所詮親の言いなり。全部言う事を聞いて全部それ通り実行する機械。
「ほら、アンタも何か言いなさい」
「……色々な事を教えて頂きありがとうございます」
100点の回答。マイナスもプラスもされない平凡な回答。これでいい。何もかも上手くいくならこれで。
……と、思っていたが。担任の先生はどうやら違うらしい。
「𓏸𓏸、お前は本当にここへ行きたいんだな」
「……はい」
「お前の成績なら好きなところを選ぶ権利がある。かと言ってあまり低すぎるところもあれだが……、何かしたい部活や入りたい学部はあるのか」
「……行ってから決めようかと」
「…………𓏸𓏸は、自分に誇りを持った事はあるか」
「……いえ」
「先生はな、親の言いなりで先生になった。なったはなったで楽しいが、本当はラッパーになりたかったんだ。まぁ厳しかったあの家では嫌味しか言われなかったが!」
「はぁ……」
「自分の職業、自分のしている事、自分の夢に誇りを持って、これこそが私の夢だと言えば認めてくれるさ」
「……そうですか」
「……ま、時間はある。たくさん考えるといい」
そう言って立ち去る先生の後ろ姿はどこか寂しそうで。自分の薄っぺらい志望理由が書かれた紙を見つめる。
クシャりと紙の端を握りしめると、自分の足は先生の後を追っていた。
『誇らしさ』
8/16/2024, 11:04:47 AM