ストック

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ようやく私の出番がやってきた!
君が私をクローゼットの奥から取り出す。
1年ぶりに見る君は、また背が高くなったようだった。
「元気にしてたかい?」
聞こえるはずはないのだが、1年ぶりに会えたのが嬉しくてつい声をかけてしまう。

さて、今年はどこに行くのかな?
川原でバーベキュー?森にセミを捕りに行く?それともあの一面のヒマワリ畑かな?

君はポケットからスマホを取り出すと、誰かにメッセージを送り始めた。
「スマホ、買ってもらえたんだね!」
君はしばらくソワソワとしていたが、通知音が鳴るとスマホに飛びつき食い入るように画面を見つめる。
そして「よっしゃー!!」と声を上げる。
おやおや、何かいいことがあったのかな?
そして私をひっ掴むと「行ってきまぁす!!」と駆け出していく。

途中、君は道端に咲いているヒルガオの花を摘んだ。
そして、私のリボンに花を差し込む。
「そんなに花好きだったっけ?」
去年は花より昆虫だったのに。どうしたんだろう。

やがてあのヒマワリ畑に着いた。今年も黄色い海は健在だ。
私は先客に気がついた。君と同じくらいの年の女の子だ。
君は私を彼女の頭に被せた。サイズが少し大きいが、彼女は嬉しそうだった。
「行こう!」
君は彼女と一緒にヒマワリ畑の中へ歩いていく。
ぎこちなく手を繋ぎながら。

ああ、本当に君はこの1年で大きくなったんだね。
この分だと、私の出番はいずれなくなってしまうかもしれないな。

8/12/2023, 7:31:06 AM