「いつまでも一緒に、手を取り合って進んでいけたらいいね」
そんな物語みたいにうまくいくかしらと、その言葉を言われたときのわたしは信じきれていなかった。
人の気持ちなんてわからない。数年、いや、一ヶ月先でもころっと変わっていてもおかしくないから。
「そうね。あんまり期待しないで未来を楽しみにしてるわ」
勘違いしないでほしい。わたしはこの人を本当に好きだし、尊敬してる。だからこそ未来にこわくなって、弱気な答えを返してしまった。
絶対この人には見抜かれているでしょうね。
「大丈夫。こわいことなんかなにもないよ。ぼくが意外と頼りになるのは知ってるでしょ?」
握られた両手には少し冷たい温度が伝わってきたけれど、いつものこの人だと安心する。本当に心が大きくて、わたしの「本当」をすぐに見つけてくれる、わたしにはもったいない人。
「うん。でもわたしのことよくわかってるなら、それだけじゃ信じきれてないってわかってるでしょ?」
「ありゃ、やっぱり? ぼくもまだまだだな」
「だから、絶対離れないでいてよ?」
「それなら任せておいて」
眉尻を下げて笑いながら、わたしの唇に軽く触れた。
お題:手を取り合って
7/15/2023, 12:11:54 AM