花とコトリ

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君が見た夢。雪の静寂、白い記憶。

窓の外は、音もなく降り積もる雪。
世界が真っ白に塗りつぶされていく午後、僕は深い眠りに落ちた。

夢の中で、僕は古いテラスに座っていた。
足元には、いつの間にか白猫のユキが丸まっている。
雪の結晶が降りかかるたび、ユキの真っ白な毛並みと同化して、
どちらが雪で、どちらが体温なのか分からなくなる。

ユキはふいに顔を上げ、琥珀色の瞳で僕を見つめた。
冷たいはずの空気の中で、ユキが喉を鳴らす音だけが、
小さなストーブのように僕の胸を温めてくれる。

「もう、寒くないんだね」

目が覚めると、部屋は青白い雪明かりに包まれていた。
ユキの姿はどこにもないけれど、僕の膝の上には、
まだ消えない、陽だまりのような温もりが残っていた。

12/16/2025, 12:32:35 PM