落下
どこであろう。趣深い暮らしを両手に携えた広い石畳の一本道は上へ上へとうねっている。
いつもならそこを行商やらが行き交っているが。
ひどく賑やか。
今、数十を率いこの街を踏んでいるのは若い女のようだ。
どこまでも届く音を叫びながら衆は闊歩している。
私は上から彼女らを一瞥して、机の上に放られた本を手に取って眺める。退屈だった。
音が近くで止んだぞ。
窓から覗けば、あの女は上を仰ぎ、か細く歌っていた。
目の先は、ああ、あの少女の部屋か。
気づけば数十だったのは最早数えられないほどに増し、
皆が女を見つめている。
突然、壊れそうなほどの音を立てて開いた窓から可愛らしい顔が一瞬のぞき、すぐ消えた。
歌もそのうち消えた。
なんだ?
人混みのせいで見えない。
急いで階段を駆け下り、人を掻き分け。
気持ち良さそうに抱き合うふたりがいた。
赤が次々と落ちている。
少女か。
私は感動した。
心がどこまでも落ちていく。
6/18/2024, 11:41:57 AM