ストック1

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あいつとは昔から気が合う
趣味や好きなものがだいたい似ていて、
しかもお互い程よい距離感で、
肩の力を抜いて接することができる
あいつの前では、
何も考えず素の自分をさらけ出せる

だからといって、
何でもかんでも言えるわけではなく、
やはり言いづらいこともけっこうあるのだ
それはきっと向こうも同じだと思う

そんな感じなので、あいつのいくつかの言葉から、
明らかにネットに載せている僕の小説を
あいつがそうとは知らずに読んでいると気付いても、
僕が作者だとは言えずにいる
言いたい気持ちはあるけど、
あいつは僕の小説を気に入ってるらしく、
正体を明かすのは少しこっ恥ずかしいのだ

今日も遊びながら、僕の小説の話が出てきた
昨日更新したやつだ
感想を言われると毎回毎回、
なんだかくすぐったい気持ちになる
一度読んでみてくれと言うけど、
それ、僕が書いてるんだよね、言えないけど

そんなこんなで、
遊び疲れて解散しようとなり、
お互い帰路につこうとした時、
別れ際にあいつがこんな事を言った
「小説、次の話も期待してるぞ」
僕は目を見開いて驚いた
僕が作者だと知っていたんだ
同時に、なぜ僕に何度も小説の話を振ったか、
その理由がわかった
ああ、そうか
僕が言いづらかったように、
あいつも僕だと知った上で読んでること、
言いづらかったんだな
だからわざと話題にして、
こっちが自分から明かすのを待ってたんだ
でも僕が明かさないから、
思い切って言ってみたんだろう

僕はすぐに笑ってみせ、
「期待を超えるつもりだよ」
と、少しカッコつけて言った
あいつも「楽しみだ」と笑うと、
人混みの中へと消えていった
僕はなんとも言えぬ恥ずかしさと
やる気が強まってきくのを感じながら帰るのだった

9/28/2024, 1:52:36 PM