響き渡る声に振り向くと君がいた
免疫不全症病棟 地下駐車場
また明日ね…と病室の母を見送り
疲れ果てながらも…
ナースセンターに挨拶して過ぎて
8階エレベーターホールで…
ままならない気持ちと…
至らない気持ちと…
その2つが胸を締めつけてきて…
いいしれない混在感に襲われ
完全グロッキーな状態で…
母の担当看護師さんが追いかけて来て
いっしょに…と…
健気で若さ溢れる言葉に苛立ちながらも
ありがとうと添えて感謝を伝えると…
エレベーターは彼を降ろしてから
地下3階に着いた
ワゴンの後方ドアを開けながら…
もたれ掛かると溜め息が出て涙も出て…
座り込んでしまった…
力が抜けてしまい…
いけない…いけない…!
そう思っても…
もう気持ちが立て直せない…
誰かに助けを求めたいけど…
気が付くと面会時間も過ぎてて…
とりあえず車を出そうとして……
非常口のドアの向こうに人の影が…
こっちに向かって来る…
逆光でよく見えないけど…
奴は黙って優しく抱きしめてくれた…
悲しみに溢れ出していた涙は
温かな涙へと…
会えて良かった…
いつもありがとう…
利用時間外料金を券売機に払い
地下駐車場を上りながら
ふたり明日の話をしてた…
……
自分のこと大切にして
誰かのこと そっと思うみたいに
いちばん大切なことは
特別なことじゃない
小田和正
11/29/2025, 1:17:46 PM