きらめき(9.4)
夜のような人。悪く言えば暗闇のような。いつもひっそりと過ごしていて地味で孤独な少女だった。うちの時代遅れな暗い紺のセーラーがよく似合う、黒髪を伸ばしっぱなしにした典型的な陰キャ。
そんな少女のことを思い出したのは高三も冬、ピリピリとした冷たい夕焼けの下でのことだ。
いまいち勉強に身が入らず手ぶらで黒い海に向かうと、重い髪を結い上げ野暮ったいスカートを何折もした女子高生が叫んでいた。アンバランスな音程で。リズムをとっているらしい右足は地団駄を踏んでいるようで。
それでも、異国のロックをシャウトする姿はどうしようもないほど魅力的だった。
ふと彼女はこちらを振り返って、瞳を大きく見開いた。その顔はやけに清々しくて明るく輝いていて。それは汗か、飛沫か、はたまた涙だったのか。身体全体で生き生きと煌めいた彼女ははにかんで笑った。
彼女が夜のような少女と同じ人物だったのかは今でも確信が持てない。だけどあれから、少女の瞳に星が瞬くようなきらめきを見る気がしている。
9/4/2023, 12:07:35 PM