イオリ

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また会いましょう

帰り道。小さな石ころを蹴飛ばす。遠くまで飛ばそうと蹴ったが、ブロック塀にぶつかって思ったほど飛ばなかった。こんなことさえ上手くいかない。

連絡がきたそうだ。悪かった。また会いたいと。

結局自分は、その彼の代用品でしかなかったらしい。少しでも自分にチャンスがあると思ったのが情くなる。

もう恋はいいや。

心のなかでつぶやく。

風が吹いた。僕の肩を優しく撫で、黄昏の星影通りを抜けていった。ふいに、追いかけるように振り向くと、空に天使が浮かんでいた。その姿は、まるで光のベールに包まれたように輝いていた。白い翼がゆっくりと羽ばたき、金色の髪が風に舞っている。天使の瞳は深い青色で、まるで全てを見透かすかのように静かに輝いていた。

そんなこと言わないで。また会いましょう。

微笑みを浮かべながらささやいた。



──ってことがあってさ。

へぇ。

それで今また、恋をすることになった。僕と付き合ってください。

うん。いいよ。

やっぱり駄目だよな。うん。

いや、いいよ。

え?なんて?

だから、いいよ。付き合いましょ。わたしたち。

ほ、本当?やったあ。

ふふっ。喜びすぎ。

だってさ、付き合えると思ってなかったから。……ちなみにさ、さっきの天使の話、信じる?

信じる。

え、ホント?いや、信じてくれて嬉しいけど。今まで話した人、誰も信じなかったから。

だって私も会ったから。その天使。

本当?

うん。星影通りでしょ。本屋の側の。

うん、うん。

だから信じる。

そっかぁ。やっぱりあれは本物の恋のキューピットだったんだな。……よし。じゃあふたりで会いに行こう。

今から?

今から。お礼を言いたい。あなたのおかげでまた恋ができますって。嫌?

ううん、嫌じゃない。

彼女が手を差し出す。僕はゆっくりと握った。

会えるかな、あの天使に。

きっと会えるわ。そんな気がする。

黄昏の星影通りに向かってふたりで歩き出した。



11/13/2024, 11:12:58 PM