アルベルト幸薄

Open App

「特別な存在」
現在時刻十一時五十六分
分針「なあ時針」
時針「なんだよ分針」
分針「起きてたか」
時針「ちょっと喋ってないからって寝た判定になんのやめろ」
分針「いいじゃんかよ。俺たちが喋れんの距離的に数分なんだから。寂しいんだよ」
時針「そうか?逆に言えば会いたくなくても一時間に絶対数分は顔を合わせることになるんだぞ」
分針「まぁ、そんなことはどうでもいいんだよ。それより俺さ落ち着きがないやつ嫌いなんだよね」
時針「それってつまりアイツのことか」
分針「そう!アイツこのこと」
時針「やめとけって。アイツ一分ごとに来るから悪口言ってるといつか出くわすぞ」
秒針「やっほー。今何話してたの?じゃあねー」
時針「ほら来た!」
分針「合ういうところが嫌いなんだよ。顔合わせるごとに挨拶してくるのうざいんだよ」
時針「確かにウザイがアイツも大変なんだよ。俺たちみたいに同じ場所にとどまることができなからそうなるのも無理はないだろ」
分針「でもよぉ〜。一分ごとに挨拶されんのいい加減にしてほしいんだよ!」
時針「待て、これくらいにしておこう」
秒針「どうもどうも。なんかさっき俺のこと言ってなかった?じゃあね〜」
時針「言わんこっちゃない。多分俺たちの会話聞かれてたぞ」
分針「この際だからはっきり嫌いって言ってやろうかな」
時針「俺は知らんぞ。時計の仕組み忘れたのか?」
分針「そっか。そんなことしたら一分ごとに気まずくなるか」
時針「そうだろ?我慢するしかない。それが俺たちの運命だ」
分針「我慢かぁー。時針は腹立たないのか?」
時針「俺はあんなやつがいるからこそ今が楽しいんだけどな。うざいけど」
秒針「おい!今俺の悪口言ってなかったか?」
時針、分針「ギクッ!?」
時針「こりゃまいったな」
分針「めんどくさいことになっちまった。どうすれば良いんだよ。これから顔合わせるたびにアイツから嫌味言われるかもしんなよ!」
時針「アイツ意外にも恨む心が強いからな。俺も覚悟しなきゃな。」
分針「今はいいかもしれないけど俺達が離れたときはもっとしんどいぞ!終わった…俺の人生終わった…」
時針「それはそうとして俺たちもうすぐで重なるな」
分針「ああ。もうすぐあれか。あれうるさいから嫌なんだよな」
時針「でも、特別な存在って感じがしていいよな。俺もその役割が良かったな」
分針「確かに。一気に人間の注目浴びれるもんな」
時針「もうそろそろか」
秒針「お前ら、さっきのこと忘れてないからな!」
鳩「俺の出番だから静かにしろ」

人「もう十二時か。そろそろ飯作るか」

3/24/2024, 3:37:40 AM