「微熱」
目が潤んで、喉が燃えるように熱い。
これから仕事だというのに、頭がぼーっとして、なかなかメイクが進まない。
時刻は午前7時40分。電車が出るのは午前8時だ。
コレは間に合いそうもない。特に大事な用事もない今日はこのままベッドに飛び込んでしまおうか。
一度甘い方に逃げて仕舞えば、もう簡単に軌道に戻ることはできない。
熱が有ると嘘を吐き、会社に休みの連絡を入れる。
はぁーっと、溜息をつく。
溜息を吐くと幸せが逃げていくとは言うが、ため息をつくと気持ちが楽になるのは私だけなのだろうか。
目を閉じて、毛布を頭までかける。
意識がだんだんと遠のいていき、眠りに落ちた。
また、あの男の子に会う。
眠りに落ちると、毎回出会う男の子。
優しく、微笑んで抱きしめてくれる彼に私は一瞬で恋に落ちた。
ずっと彼といたい。
私を認めてくれる。受け入れてくれる彼と。
現実では味わう事のできない幸せに満たされていく。
鏡に映る、赤く頬の染まった私。
また意識が遠のいて、頭が悲鳴を上げる。
あぁ、彼に堕ちていく。
これはきっと、ただの微熱だ。
そう思いながら、彼女は目覚める事のない深い眠りへと堕ちていく。
堕ちる。
11/26/2023, 11:49:58 AM