中宮雷火

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【殺人崇拝】

⚠今回の物語は過激な内容(グロい系)を扱っております。
苦手な方・不安な方は次回作を楽しみにしていただけると幸いです。

また、今回の物語は前回作『×』と同じ世界観です。
本作を読む前に『×』を読んでいただくと、より世界観への理解が深まると思います。

本作は(タイトルからも分かるように)狂った内容ですので、
世界観への理解が非常に難しいかと思いますが、
「この物語エグい!」と思って頂ければ嬉しいです。







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私はずっと恋をしている。
彼とは3年前に知り合ってから、ずっと恋仲だ。
しかし、結婚を考えているわけではない。
というか、「結婚」と言われてもピンと来ない。

なぜなら私は、彼を崇拝しているからだ。


「ただいま!」
私は友人との旅行から帰った。
久しぶりの家だ。
彼は微笑んで
「おかえり、待ってたよ」
と、優しく頭を撫でてくれた。
リビングには黒いゴミ袋が2つほど放置されていた。
きっと、私が旅行している間にも『ゴミ』を処理してきたのだろう。
「帰ってきて早々に悪いけど、この後手伝ってくれない?」
私は2つ返事で承諾し、スコップや軍手を用意して、彼とゴミ袋を抱えて外に出た。

山に着いた。
軍手をはめてスコップを持ち、ひたすらに土を掘る。
ある程度掘れたら、ゴミ袋を埋める。
私達の日課だ。
今日も日課をこなしたので、誰にも見られないようにさっさと車に乗り込んだ。
車の中で、彼と色々な話をした。
主に旅行の話。
温泉入ったよ、お土産に和菓子買ってきたよ、そんな話を延々と続けた。
彼はずっと笑顔で私の話を聞いてくれた。
ああ、こんなところに惚れたんだよな。
私は昔の、痛む過去の記憶を思い出した。

実の両親から虐待を受けていた私は、人間関係に飢えていた。
本気で愛してくれる人が居てほしかった。
話を聞いてくれる人が居てほしかった。
とにかく飢えていた。
何とか実家を抜け出して上京した頃に、彼と出会った。
理想の人間だった。
彼は私のことを全て肯定してくれて、
過去のことも全て受け止めてくれて、
本気で愛してくれた。
私も、彼に本気の恋心を持った。
ずうっと、ずうっと一緒に居たい!
初めてそう思えた人だった。

しかし、1つだけ理想と違ったことがあった。
彼は"殺人鬼"だった。
ひっそりと人を殺し、山に埋める。
それを生業としていた。
異常だ。
こんなの、異常だ…!
そんなことくらい私にだって分かった。
しかし、それでも私は彼から離れなかった。
だって、彼に抱いたのは不気味さ・恐怖より
美しさだったから。
人を殺すときの目つき、指先、ナイフで刺すときの顔、
やっていること全てが美しく感じられた。
もっと、いっぱい彼の美しさをこの目で見たいと思った。
やがて彼への気持ちは「恋」から「崇拝」へと変化していった。
彼とは恋人であり、共犯者だ。

家に着いた。
正直、もうクタクタだ。
あくびが何度も出てしまう。
「私、先に寝るね」
そう言って寝室へと向かった。

午後4時。
何だか物音がして目が覚めた。
彼が何かやっているのだろうか。
しかし、こんな時間に起きているとは。
何かあったのだろうか。
まさか…、警察?
私は冷や汗が止まらなかった。
バレた?なんで?
どうしよう…、どうしようどうしよう!
私はパニックになった。
嫌だ、離れたくない!
「キイッッ」
ドアが開いた。
鼓動が高鳴った。
「…っ」
彼だった。
「どうしたの?」
「ううん、ちょっと…嫌な夢見ただけ」
私は安堵した。
良かった…警察じゃ無かった…
そう思ってほっと息をついた瞬間、
頭に鈍痛が走った。
「…ぇ、」
私は痛みに耐えきれず、うずくまった。
痛い、痛いよ…
私はさっきまで頭を押さえていた手を見た。
濡れている。
そして、独特の匂い。
何となく、血だと思った。
暗くて色は見えないけど。
何で血が?どうして?
意味不明な状況に困惑していると、
また鈍痛が走った。
頭、背中、腕、脚。
あらゆるところに硬いものが打ち付けられた。
何、一体?
次第に瞼が重くなっていって、
頭も上手く回らなくなって、
声も発せなくなった。
遂に視界が黒一色に染まり、その中で彼の声が酷く響いた。
「あー、また『ゴミ』捨てなきゃなぁ…」

9/12/2024, 3:17:26 PM