この季節になると母の趣味でお風呂場の浴槽が黄色に染まる。
バラ風呂とかみかん風呂とかいろいろ試した母だったけれど最終的にはゆず風呂に落ち着いたらしい。
「先生もつかってくれたりする、かな……」
先生のお家のお風呂と私の家のお風呂、同じものを湯船に浮かべているのはちょっぴりロマンチックだ。
まるで、離れている恋人どうしが同じ月をみて愛を語りあうような……。
ほら、貴方がみている月と私の視界に映る月はおなじなのね…、みたいなさ?
見た目に反して夢見がちな先生のことだからこの話をしたらちょっぴり笑って、でもいいねって言ってくれそうだ。
そう思ったら何の変哲もないゆず風呂も豪華なものに思えてきた。やっぱりいい匂い。
今日のゆず風呂はいつもより甘酸っぱい匂いがした。
『ゆずの香り』
12/22/2023, 2:08:14 PM