もち

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#目が覚めるまでに




今夜も僕は眠りにつく

贅沢ではないけれど、
大好きだった肉じゃがをつくって
シャワーを浴びて体を清めて
アールグレイの紅茶をミルクで割って、
さよならのつもりで飲み干して

そうしてベッドに横たわって
目を閉じて
祈る

朝、目が覚めたら
消えていますように

僕の体が
僕という存在が

だれかを道連れにしようなんて思わない
地球の滅亡も
大災害も
飛行機事故も願わない

僕だけでいいんです
神さま
どうか
僕という存在が
ひっそりと
シャボン玉のように
この夜のうちに
パチンと消えてしまいますように

どうぞ
神さま
他には何もいらないんです
ささやかな わがままなんです
僕の命は
本当に生きたい誰かにあげてください
僕には重すぎるから
こんな僕でも
一度くらい、誰かの役に立ちたかったんです

閉じたままの目から
ポロポロ涙が溢れだして
枕を濡らし
部屋を水浸しにし
真っ暗な湖底に僕を沈める


もう来ない
もう朝は来ない


ああ、よかった
ようやく僕は、解放される……








明るくなった部屋の中で
僕はふたたび
目を開けた

カーテンを透かした窓の外に
また、朝が来ていた


その光に目を細めて
僕は

この世界には
神さまなんていないんだと知った









8/3/2024, 2:59:15 PM