ペリドット

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花束


27歳の終わり頃。
沢山のTo doリストを抱えて帰省した。

久しぶりの父からの誘いも多忙を理由に断ると
夜中にも関わらず突然キレだした。

「お前は、なしてそげんことも出来んとか!?」

萎んだ口元をわなわなと震えさせながら
振り下ろそうとする腕を必死で止める母。

結局、何発か叩かれたが痛くはなかった。
怖かったあの拳もすっかり歳をとっている。

それからの数日間。
父とは目も合わせずもちろん会話もない。
同じ空間にいることを拒んだ私は予定をさらに詰め、
家にはあまり帰らなかった。


まだ少し雪が残る朝。
笑い声が消えた実家から車で30分の場所にある
大きな扉の前。

久しぶりに聞いた声は少し震えていた。

「こんなお父さんだけど、〇〇ちゃんのこと大好きよ」

謝ることを知らない人が考えた精一杯の
ごめんね。だった。

まだ泣いてはいけない。

左手の大きな百合の花束をぎゅっと握り
おめでとうの声で溢れるの光へ
父と2人ゆっくりと歩き出した。

2/9/2023, 4:48:54 PM