名前の知らない学生の彼を好きになりました。
君を初めて見たとき衝撃を受けたの。
こんなに制服姿が似合う人がいるんだって。
すらっとした体にワイシャツが似合うと思った。
ワイシャツのボタンはしっかり締めているのに,
ピアスを開けているところ
カッコいいって思った。
彼も私の存在に気づいてるの。
あの日
降りるはずの駅についてるのに
ボーッとしていて
急いで電車に降りたことがあった。
その時はハンカチを落としたことすらわかんなかった。落としたどころか家に忘れてきたと思っていた。
次の日電車に乗ると彼がこっちに向かって歩いてきて,ハンカチを差し出してきた。
「昨日,落としましたよ。」
初めて聞いた彼の声は
もう私の好みのどストライクだった。
「えっ,あっ,すみません。ありがとうございます。」
私が言うと
「いえいえ。」
私に笑顔でそう言って
彼はいつもの場所に行ってしまった。
もうこんなことあったら惚れるしか選択肢ないじゃん。
そんなことを思っていた。
最近寒くなってきたのでマフラーを付け始めた。
彼はセーターを着ていて
「カッコいい」
思わず声に出してしまいそうだった。
彼に惚れてしまったからそう見えてしまうのか
はたまた他の人たちも
また彼をカッコいいと思っているのか
私には分からなかった。
今日はなんだか人が多くて
押しつぶされそうになっていた。
気のせいかもしれないけど
おしりを触れている気がして
とても逃げ出したくなった。
そんな時突然手を引っ張られた。
「えっ,」
「突然ごめんなさい。触られてましたよね?
だからこっちの方が安全かなぁって思って。」
彼の声を聞いて私は少し安心した。
彼が電車の扉の方に連れてってくれて
彼が壁になってくれた。
もう私の視界は彼しか捉えられなくて...。
車内が揺れると彼は私の方に倒れた。
「「ごめんなさい。」」
お互いの声は満員電車で消えてった。
しかし過去最高で近い私たちの距離に
彼と私は顔が赤くなっていた。
そんな彼を見て私の心臓の鼓動を早くさせていた。
お互いが意識するまであと少し
─────『セーター』
11/24/2022, 9:53:32 PM